道東のラッコ

北海道の霧多布岬のラッコ。

全国版のニュースでも取り上げられていたので、見た方もいるのではないでしょうか?

可愛いラッコですが、彼らの歯はかなり強いことがわかっています。カニの殻や貝を噛み砕くラッコの歯は、強度がなければなりません。それを証明したのは、アメリカ、ドイツ、クウエートからなる研究チームです。このチームの研究によると、ラッコの歯のエナメル質(歯の最表層)は人間の2.5倍の強さがあるそうです。

顕微鏡で歯を見ると歯のひび割れを防ぐタンパク質の多いゲル質を人間以上にラッコは持っており、また断面の構造も密になっているそうです。そのため、ラッコの歯は簡単にヒビが入ったり割れたりしません。

この研究チームは、初期の人類が硬い肉や硬い木の実を歯でこじ開けることにも疑問を持ち研究していました。人類の祖先の1つボイセイ猿人(1万2000年から2万3000年前)は、現代のラッコと同じ数のヒビ割れ防止の層があったそうです。この発見は、ボイセイ猿人の食生活を知る手がかりのみならず、我々が進化の過程で歯が長い年月をかけ弱くなってきていることも示唆しています。

当院でも、カニの殻などの硬いものを歯を使い開けた際に負傷し来院される方がいらっしゃいます。ラッコのような歯を持ち合わせていない私たちなので十分注意を払わなければなりません。

歯(入れ歯を含め)は、道具なので興味を持ち、使い方や特徴を知るだけで長持ちすると私は考えます。歯に興味を持ってもらい歯が長持ちするよう院内だけではなく、このホームページでも発信していきたいと思います。