みなさんは、今年に入りもう笑ったでしょうか? 日本には、『初笑い』という言葉があります。『初笑い』とは新年になって初めて笑うことです。これは「笑う門には福きたる」という言葉通り一年が笑いに満ちた幸多い年であるようにという願いが込められている季語でもあります。
しかし、この笑うという行為がいけないこととされていた国がありました。それは、フランス(パリ)です。17世紀18世紀初めに描かれた絵には笑みはなく、笑みを描いた絵には抵抗を感じていたそうです。この時代は、笑顔を隠して生きていくのがスタンダードであり、当時フランスの権力の中枢であったヴェルサイユ宮殿でもここに集う上流階級の人たちは笑顔を見せていなかったと言われています。
この歴史がどう変化してパリ市民は自然な笑顔を取り戻したのかを調査・研究した人物がいます。彼の名は、コリン・ジョーンズ氏で、Smail Revolutionという本にまとめられています。
その本によると、18世紀のフランスでは特権階級に属するほとんどの人々が砂糖の摂りすぎで口の中に大量の虫歯を抱えていたそうです。それが理由でなのか口を開けて笑う行為には抵抗があったようです。また笑う事自体に良い意味を持たない時代を裏付けるようにフランス語で微笑みは「sourire」と書きます。これは、「sous(下)」「rire(笑う)」が合わさり出来た単語で、自分より身分の低い者を笑うというところからうまれたとも言われています。1789年からフランス革命が起き、それまでの王政が崩壊することになり徐々に上流階級の人が市民と交流するようになり笑顔を見せ合うように変化していったと言われています。
また、1720年代には近代歯科の父とも呼ばれるピエール・フォシャール(外科医・当時は外科医が歯科治療を行う)の出現も関わっているようで、それまでの治療は虫歯になったら抜くしかないといった治療がいわゆる現代に近い治療スタイルに変わり歯がない状態を回避できるようになったことも影響しているようです。笑いに対する否定的な認識は、18世紀半ば頃解かれます。
笑いが肯定的に変わる、それには歯科医師の存在もあったことが彼の記載からわかります。抜歯ではなく、なるべく歯を残し機能回復に努めた結果が笑顔の獲得であったのであれば、本当に素敵なことだと思います。
私たち歯科に携わるものは治療をすることが全てですが、その先に患者さんとって素敵なことが待っていたらより良いなと思います。そんなことを思いながら2024年もスタッフ一同邁進して参ります。